投稿日:2008-02-07 Thu
一時期、更新を怠っていたせいで、いろんな問題に対するフォローが遅れています。今日はリハビリ問題編。
リハビリに成果主義の導入という問題が起こっています。この問題、なかなかに専門的な部分もあって素人の私にはよく分からない部分もあるのですが、下記のサイトでは次のように説明しています。
回復期リハビリテーション病棟は脳卒中や骨折による障害者を受け入れて、日常生活機能の改善を手助けするための病棟です。軽症の方々のほとんどは自宅に退院できますが、極めて重症の患者さんの多くは自宅に戻る事が出来ずに、施設等に退院していきます。
厚生労働省は平成20年度の診療報酬改定において、回復期リハビリテーション病棟の入院料を一律に削減し、同時に数値目標で示す成果主義を導入することを意図してます。
○1月30日の厚労省の政策変更案は、急性期病院から回復期リハ病棟への入院患者の絶対数が減じる
○最重症のかたがたが棄民化する確率が増大することに加えて、MRSA保菌者、気管切開患者、抑制されている患者等の棄民化確率が増加する。
○不必要な胃瘻造設が増加する
○急性期病院の脳外病棟や整形外科病棟の在院日数が長期化する
ご本人に確認取ってませんが、このサイトをご紹介しておきます。
私もこの春休みの勉強課題としたいと思っています。
http://homepage1.nifty.com/jsawa/medical/
さらに、4月からまた新たな制限策が画策されています。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/01/dl/s0130-11j_0001.pdf
これによれば、リハビリの日数制限はそのまま。それ以上の日数を実施する場合は、月に13回まで。あとは、自費で診療を受けろと言うことになります。
これを「医療破壊・診療報酬制度・介護保険問題を考える」では次のように記しています。
療養病床における回復期が遅れている入院患者のリハビリテーションは、発症から6か月をすぎると、1か月に20分×13単位で終了になります。つまり、1日6単位やれば、残りの28日は寝たきりで良い、ということ。
回復が遅れているのは、自分のせいではないのに、回復期が遅い人は1か月に28日は自費でリハビリしなさい、というのがメッセージでしょうか??
おそらく、そうなんでしょう。日数制限の問題で騒がれたという理由で除外規定を付けた。今度は除外規定の基準でもめたという理由で除外規定を削った。
どこまで、厚生労働省は場当たり的なのか。ニワトリは三歩歩くと前のことを忘れると言いますが、一昨年の問題点を忘れて昨年の問題点を解消しようとして、一昨年の状態に戻してしまう、ということになります。なるほどこうやって薬害問題などを引き起こしてきたのですね。。。
それから、多田富雄さんの著書2冊、紹介しておきます。
○「寡黙なる巨人」(文藝春秋)
○「わたしのリハビリ闘争 最弱者の生存権は守られたか」(青土社)
これも課題図書だな。。。
投稿日:2007-09-16 Sun
今日、懸案の映画「SICKO」をみてきました。「ボーリング・フォー・コロンバイン」「華氏911」で日本でもおなじみになったドキュメンタリー映画監督マイケル・ムーアの新作です。
http://sicko.gyao.jp/
マイケル・ムーアの作品って、ようするに「世界の王者・アメリカって実はこんな異常な国なんだ」ということなんだと思っています。今回、彼がアメリカの異常さとして取り上げたのは、医療保険の問題でした。
アメリカには、国民皆保険の制度がありません。そのため、保険に入れない人がいるわけです。また、保険に入ることができても、なんやかんや理由を付けて医療費給付を受けられない人、打ち切られる人が続出します。日本ではまず考えられない事態だと思うのですが、保険会社から医療費給付を拒否された人は、数百万円にも上る医療費を払ったり、あるいは選択肢を示されて安い医療に切り替えたりといったことがよくあるということになります。映画の冒頭で示されたのは、木材を切るグラインダーで指を二本飛ばしてしまったひとが、その医療費の高さから、一本だけで妥協したという姿でした。映画の後半では、医療費の払えそうもない患者を病院がホームレス保護施設のそばの道ばたに捨ててくるというショッキングな映像でした。
ムーアは、この異常さを諸外国との比較から示してゆきます。
まず取り上げたのがカナダ。ムーアは「ボーリング・フォー・コロンバイン」でも、アメリカ同様に銃所持が認められているカナダでめったに発砲事件が起こらないことを紹介し、銃社会アメリカの異常さを際だたせていました。カナダでは国民皆保険のうえ、医療保障が充実していますので、アメリカとはまったくかかる金額が違います。カナダへ行き、そちらでカナダ人の男性と内縁関係にあると言ってもらって医療を受けるアメリカ人女性が紹介されます。エンディングのクレジットロールでは、カナダ人との結婚を勧める結婚相談所?のサイトが紹介されていました。
次に、フランス・イギリスにおける医療保障を紹介していきます。
これはけっこう印象的でしたね。イギリスの元国会議員のインタビューで、その人は、「民主主義社会である以上、政府が国民の利益になることをしてゆくことは必要だし、自分の利益を代弁してくれる人に投票すればいい」といいます。フランスでは、デモの効力が語られていました。「俺たちを困らせるとギロチン台にかけるぞゴルァ!」という伝統の国だなあと。
そして、話は911テロに移っていきます。
911テロに際して「英雄」と呼ばれた人たちの中に、後遺症に苦しむ人たちがいます。民間ボランティアで救助活動に携わった人たちの多くが、埃を吸ったことにより肺を痛めるなどして苦しんでいます。これに対して政府は、公務員でないことを理由に救済を行っていません。その実態をあぶり出すために、ムーアはこの患者さん達と一緒にキューバへ行きます。
キューバでは、911テロの犯人達が国際条約に則って手厚い医療保護を受けていることが紹介されたあと、共産主義国家における医療のあり方が紹介されていきます。911の後遺症の人たちは、ここで手厚い医療を受け、安い薬を手にします。チェ・ゲバラの娘さんだというお医者さんがキューバの医療のあり方を論じています。
キューバというのはアメリカの国民にとっては、日本人にとっての北朝鮮のような存在だと思うのですが、そう信じ込んでいたところがキューバの方がはるかに医療水準が高いという驚愕の事実、という手法は非常に効果的であったと思います。
医療を国家が保障することを、アメリカの歴代政権は「社会主義的」というレッテルで悪と見なします。その背景には保険業界のロビーズムがあるということ。しかし、医療を保障されることは、国民が国家に対して要求してなにもおかしいことではないこと。そういうことを感じさせる映画であったと思います。
この映画では、日本はまったく登場しません。
しかし、今の日本の行政が「官から民へ」「皆保険=負担増」といったレッテルを貼る実態を考えたとき、暗澹たる気分になってきます。世界一異常な国であるかもしれないアメリカを、日本はお手本にして(あるいは圧力に屈して)右へならえの態度をとり続けているからです。年金や医療保険の破綻を煽る言説の中に、「だから民間に」というアメリカニズムが紛れ込んでいるのではないかという危惧を強く感じました。ムーアがなぜ日本に取材しなかったのかと言えば、やっぱり日本が理想的な医療にほど遠いからだったんだろうな。
ちなみに、日本にも医療給付切り捨てはすでに実在します。
少し前に評判になった生命保険料の不払いが代表例ですが、他にも、損害保険の給付を社医が削ってくるということはよくあることです。たとえば事故を起こした人が対人無制限の保険に入っていても、被害者のリハビリ等に関しては、その患者を診てもいない保険会社の雇われ医が「改善の見込みなし」などの理由で給付を打ち切ると言ったことは頻繁に起こっていることです。医療保険を民間に任せると言うことはそういうことなのだということを、この映画を通して日本の人も知っておいた方がいいかなと思います。
なにより、リハビリ日数制限がこの医療給付切り捨てそのものですね。「受ける医療に制限があるなんて信じられない」と言っているフランス人が登場しますが、まったくです。
その一方で、ムーアは医療保障の充実した国の国民の税負担の問題は軽くスルーしていて、そこがこの映画に不満を残した点です。私なんかの気分としては、皆保険制度の維持と医療負担の無料化かそれに近い金額という制度を取るのであれば、消費税10パーセントでも一向に構わないと思っています。
命を守ることは自己責任ではなく国民に固有に与えられた権利であるという考え方を忘れてはならない。それはまさに、医療に対する制限を一律に課す「リハビリ日数制限」の誤りそのものでもあると感じました。フランスが出生率が上がったのも宜なるかなという感じで、未来に対する不安を取り除くことが国家繁栄の道なのだと言うことを強く感じました。
それから、この権利を要求する権利も私たちにはあるということも強く感じました。国家は、国民がものを考えなければいいと願っているのだ、とイギリスの元国会議員はいいます。「民は知らしむべからず、寄らしむべし」という言葉がありますが、デモ等を通して意思表示をするという権利をしらず、助け合いと連帯の精神を失った日本人の姿とそれは重なります。自己責任という言葉が幅をきかせたこの数年間に、私たちはまた分断され、孤立したのだという気がするのですが、
なんかうまいことまとまりませんが、まあ早いとこ(というのはそろそろ上映も終わりかもしれないから)みてくださいということで、まとまらないままご紹介します。
投稿日:2007-08-28 Tue
ご承知のように、昨日内閣改造がありました。改造新内閣は「人心一新」を謳っていますが、はじめての国政選挙で国民に「否」の意思表示をされた首相が替わることが、一番の「人心一新」だと思うのですが、まあそれはこの記事の主題ではありません。
ここで注目したいのは厚生労働大臣に就任した舛添要一さんのことです。
実はこのダイコクブログ。では過去に舛添要一さんを数回の記事で取り上げています。
■リハビリ打ち切り問題に関するバラエティ番組(2006年10月12日)
http://daikokukinkin.blog59.fc2.com/blog-entry-91.html
ようは、昨年10月7日に放送された「みのもんたのずばっとコロシアム」において、リハビリ打ち切りで苦しむ90歳の女性の訴えに対し、「こんなことはありえない。この方の件については調査をしたい」という趣旨の発言をしたことです。
さてその後、この調査はどうなったのでしょうか。
厚生労働大臣になった舛添さん、ぜひこの調査を徹底して行ってください。
よろしくお願いします。
そして、厚労省よりの一部「識者」のご都合主義な報告に惑わされず、リハビリ日数制限の撤廃を行ってください。お願いします。
■厚労省よりの報告について拙ブログ。
http://daikokukinkin.blog59.fc2.com/blog-entry-101.html
実はこの際にも舛添さんの名前は登場していまして、厚労省の意を受けた医師が与党の勉強会に呼ばれて説明を受けた際の記事です。上に、「厚労省よりの一部「識者」のご都合主義な報告に惑わされるな」と書いたのはこういう事実があってのことです。
※なんかもっといろいろ書けそうな気がしたのですが、夏バテで頭が働かないようです。
※舛添要一さんは「舛添」が正しく、「桝添」ではないみたいです。
投稿日:2007-08-25 Sat
「なりゆきまかせ」といいながら、このブログはリハビリ問題を主題としつつある今日この頃です。が移りつつあります。で、ちょうど能登紀行の連載を終えたばかり。で、今日はふだんと目先の変わったリハビリ問題。なんとなく個人的にもうれしくなる新聞記事でした。■被災者に支援の風 県作業療法士会 うちわ3000本作る(中日新聞石川)
http://www.chunichi.co.jp/article/ishikawa/20070823/CK2007082302043222.html
学会などで販売 義援金募り復興PR
県作業療法士会はオリジナルのうちわを通じて能登半島地震の復興支援を続けており、これまでに三千本のうちわを作った。
被災者への義援金を募ることや、能登半島が元気であることを伝えて観光に訪れてもらおうとの思いを込め製作してきた。
同会は鹿児島市など全国各地で行われる作業療法士(OT)の学会や研修会で、「がんばっています能登」と書かれたうちわを一本二百円で配布。六月には県に売り上げの二十万円を寄付した。
また七月末には暑い夏を元気に乗り越えてほしいと「応援します」とメッセージを添えたうちわを輪島市はじめ能登地区すべての仮設住宅に配った。
同会では今後も催しなどでうちわを配り、募金を寄付する方針だ。 (寺本康弘)
■ダイコクブログ。がんばる能登紀行。
http://daikokukinkin.blog59.fc2.com/blog-entry-199.html
http://daikokukinkin.blog59.fc2.com/blog-entry-200.html
http://daikokukinkin.blog59.fc2.com/blog-entry-201.html
http://daikokukinkin.blog59.fc2.com/blog-entry-202.html
http://daikokukinkin.blog59.fc2.com/blog-entry-204.html
投稿日:2007-08-22 Wed
数日前ですが、リハビリ問題に関して新しい記事が出たのでご紹介します。■診療報酬、リハビリに「成果方式」導入へ 改善度を初加算
産経新聞(2007年8月19日)
http://www.sankei.co.jp/kyouiku/fukushi/070819/fks070819000.htm
厚生労働省は18日、脳出血や骨折などの患者のリハビリテーションを対象に、診療報酬に初めて「成果方式」を導入する方針を決めた。患者の改善度合いで病院ごとの実績を評価、診療報酬点数を加減する内容で、評価基準作成を進めている。今秋の中央社会保険医療協議会(中医協)で評価基準案とあわせて成果方式の導入を提示、平成20年度の次期診療報酬改定での実現を目指す。
成果方式が採用されるのは、機能回復を図る「回復期リハビリ病棟入院料」。現行では、(1)回復期リハビリを必要とする患者が常時8割以上入院(2)専従の医師1人以上、理学療法士2人以上、作業療法士1人以上が常勤−などの要件を満たせば、一律で1日1680点の診療報酬点数が与えられている。
診療報酬点数は医師の診療行為に与えられ、病状の改善度合いは加味されない。今回は患者の入院時と退院時の状態を比べ、改善度合いの良好な患者がどれだけいるかで診療報酬に差をつける。
ただ、患者の病状によって期待できる回復状態が異なることから、医療関係者の間では「成果方式になると、病院は回復の見込みが高い患者を優先し、回復が難しい患者を敬遠するのではないか」との懸念も強い。
こうした事態を防ぐため、厚労省は病状に応じた改善度合いの目標達成度を定め、数段階の評価基準を作る。その上で、病院の過去の実績をみて、高い評価基準をクリアした病院は入院料の診療報酬を高くする。同省は、すでに全国の病院から評価基準づくりに必要なリハビリに関するデータ収集を進めている。
回復期リハビリに成果方式を導入するのは、高齢化社会の進行で、今後脳血管疾患などの患者が増えるとの見通しに基づいている。不十分なリハビリでは障害が残り、入院が長期化すれば、深刻な病床不足に陥る恐れもでてくる。
同省では、成果方式を採り入れることで、各病院の積極的な取り組みを促し、回復期リハビリ病床(昨年7月現在で約3万6000病床)の増加にもつながるとみている。自宅に戻れる患者を増え、在宅医療が進めば、医療費抑制につながるとの思惑もある。
【用語解説】診療報酬
公的医療保険が適用される治療や調剤などの公定価格。診療行為や薬品ごとに細かく診療報酬点数(1点=10円)が定められている。回復期リハビリ病棟入院料の診療報酬点数は1日1680点。診療報酬改定はほぼ2年に1度で、次回は平成20年度の予定。全体の改定率は政府が予算編成過程で決め、個別の点数は厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)が政府の医療政策に基づき決める。診療報酬の対象から外れた医療行為は「自由診療」扱いとなり全額患者の自己負担になる。
--以下コメント
いち早くこの記事を取り上げた脳外科医見習いさんのブログに書き込みをしましたが、またもや医療現場に成果主義の導入ということとなります。私はこの方針に反対いたします。
「成果主義」。もはや「経費削減」の言い換え語彙でしかないこの言葉ですが、これを医療の現場に持ち込むことの危険を考えます。一義的に成果を求められるのは医者やPT, OTといった現場スタッフということになると思いますが、実際に成果を出さなければならないのは病に苦しむ患者さんということになります。その負担に対する配慮が感じられない方針に危うさを感じます。
また、その「成果」を「回復」に求めるのがこの方針の趣旨ですが、「回復」ではなく「維持」もリハビリの大事な役割であるということは、日数制限に対する反対運動の際にも強く訴えられました。「回復」に報酬をまわすことは、必然的に「維持」を削るという方針が張り付いてきます。これは考え方の根本が間違っています。それに、「回復」が実感できる前に日数制限に引っかかってリハビリが打ち切られてしまう人が多いのではないでしょうか。ということは、記事にあるように、「回復」効果の出やすい患者ばかり優遇する=受け入れ拒否といった事態があちこちで頻発するでしょう。
なにより、リハビリテーションの理念は「人間性の回復」にあります。それすら成果を求め、市場化する発想は危険であると感じます。この行き過ぎた市場化は小泉政権の行った意識構造の改革であったと思いますが、やみくもに成果主義=市場化の対象を広げたところに問題があったのではないでしょうか。ちなみに安倍晋三首相も「美しい国へ」のなかで「福祉の自己責任化」を求めています。その方向性は現政権も引き継いでいるわけです。
私たちは、この社会における経済を「効率」というフローだけではなく、「蓄積」という「バランス」で考えなければいけないと考えます。私が思うに、リハビリという行為は「効率というフロー」ではなく人間の現在と未来における「蓄積というバランス」そのものだからです。
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