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2008.05.01 *Thu

本が売れない/本を買わない ということ

別のところに書いた文章ですが、こっちにも転載します。
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本ばっかり買ってる。もともと読書のスピードは遅い方なので、どんどん溜まっていく。でも多分また買う。

ところで出版不況だというが、本が売れない理由に「平均的日本人の日本語リテラシィが落ちているので、本を読まなくなった」ことと、「読むか読まないかわからない本を買わなくなった」のふたつがある。

「平均的日本人のリテラシィが落ちている」こと、これは絶対に間違いない。

大学で文章表現の講義を受け持って10年経つが、日本語の読み書き能力は間違いなく、どんどん落ちている。漢字テストがレベルもどんどん下がっている。以前は「段落の考え方」から始めていた文章表現技術も、いまは「原稿用紙とはなにか」から始めて「「文」を作る」という話に進むようになった。新聞は年々歳々語彙を落としているが、学生のリテラシィの低下はそのペースをはるかに上回る。大学では教材に新聞を使う先生が多いが、学生は付いていけていない、ことに先生は気が付かない。『「おじさん」的思考』のなかで内田樹が書いているが、予備校の調査に寄れば「1年間で1点のペース」で平均点が下がり続けて30年だそうである。それが1999年のエッセイだからいまは更に10点下がっているのだろう(このエッセイ「大学全入時代にむけて」は『下流志向』の原型をなす、非常に優れた文章です)。それは、ブルーカラーとして最低限のリテラシィが備わっていればそれでよいという経済サイドの思惑にそった教育の成果である。

だから本は売れない。作家は売れないとおまんまの食い上げだから語彙レベルを下げ、物語の構造を単純化する。現在その到達点はケータイ小説と言うことになる。評論はさらに売れない。学歴格差社会やプレカリアートや、そういった警国の書はどしどし出版されるが、残念ながらそれを読む層は当事者ではない。

もう一点、「読まない本を買わなくなった」という点について。

最近、たくさんの本を抱えてレジに並ぶ人を見なくなった。それはすなわち、「本を衝動買いする人」が減ったと言うことである。先日、私が「蟹工船」を買った上野の駅ナカ書店で本を手にとってじ~っとみつめている女性がいらっしゃったので私もその背中をじ~っと見つめて差しあげたことがあったのだが(当然、背後から「買え、買え」という念を送って差し上げたのである。それにしてもあの本屋、いかに「蟹工船」のカバーがかっこいいとはいえ、よくあんなに平積みで並べたものだ)が、こういう「ジャケ買い」的なノリは徐々に失われている。それは端的に平均的日本人の可処分所得が減っていることが原因であるわけだが、「無駄をなくす」という構造改革的思考の蔓延の中で、不要不急の書籍購入が躊躇された結果にほかならない。

無駄をなくすとき、精神と肉体の健康に関わる事柄から削っていくのが現代のトレンドである。ガソリン税は再値上げしてでも道路工事は止めないが、クラシックコンサートやリハビリ診療報酬はガンガン削る。それを「構造改革」と称して快哉を叫んだ人たちも大勢いるのはいまの衆議院を見ればよく分かる。「構造改革主義の蔓延が出版不況を生んだ」というとおおごとのようだが、まあだいたいそんなところだと思う。

ところで本箱は「読み終えた本の保管庫」であるだけではない。「これから読む本の準備庫」もしくは「自分が関心ある知的事柄を可視化したもの」であるという機能をもつ。これは本に無駄遣いを辞さない覚悟がなければできない。そして「自分が関心ある知的事柄を可視化」することは、知性の涵養に対して効果的な方法である。

構造改革はそういう無駄を省いたので、これからの日本は辛うじて経済水準だけが現状もしくはちょっと下位程度に踏みとどまりずつ、知的水準の低い・単純労働だけが売りのブルーカラー国家になること必定である。いまは中国から研修生を招いたりしているが、じきに日本から単純労働力が輸出されるに違いない。そんな経済大国としての延命措置よりは、心身の健康に無駄遣いをしつつ、栄光ある黄昏を迎えた方が幸せみたいな気がする。

それはともかく、ご飯一食抜いても「いつか読むかも知れない本」を買うくらいの見栄みたいなものがないと大人の知恵は付かんよ、と言いたい。あんパンと牛乳を脇に公園のベンチで読む本は栄養満点の心のごちそうなのである。
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COMMENT : 11  TRACKBACK : 0  [EDIT] [TOP]

COMMENT

こっちはGW関係なく仕事です。

蟹工船売れているんだそうですね。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080502-00000041-yom-soci
もっとも漫画「蟹工船」てのが前に出てますけど。
http://www.takiji-library.jp/announce/2006/20061114.html

こちらでも学生のリテラシーは落ちていますね。メディアのために外国語に触れる機会が多くなったから聞く話すは格段に上がったけど読む書く(思考力)は逆に格段に落ちている。同僚に聞いても同じ印象です。

東大入試も私たちの時代は国語6問だったけど今は4問ですものね。
例の赤チャートもずっとレベルが下がったとか聞きます。
で、国立大にいたりすると(落ちてはいますが)なまじ学生の質が一定しているからそういうことに気がつかない。
私たちの時代でも中堅高校では鴎外や中島敦は難しくて読めなくなっていましたが今は全体がそうでしょう。


そこからすれば収入の3分の一が本代で蔵書が一万冊超えている
私みたいのは異端になってしまうのか。(私は一時に2~3万円分平気で買うから)

「「これから読む本の準備庫」もしくは「自分が関心ある知的事柄を可視化したもの」であるという機能」というのは商品でいう在庫やネットワークに相当するのにそれが親にもぜんぜんわかってもらえないのは辛いですよ。
(本を買うのは趣味や遊びだと思われている)



2008/05/02(金) 22:26:28 | URL | YY #JfX/Bf2o [Edit
いいですね~
キンキンさん。遊びに来ました~
>あんパンと牛乳を脇に公園のベンチで読む本は栄養満点の心のごちそうなのである。
そうですね。しみじみと読ませて頂きました。
ところで先日のCDボックス。通販では売り切れですね。ちょっと興味あります。のんびりとしたGWを過ごしています。本でも読もうかな。
2008/05/03(土) 11:05:48 | URL | 環ちゃん #- [Edit
防災
表題とは全く脈絡がありませんが・・・

夜中の地震はびっくりしました。というかその直前(40分程前)から少し揺れていましたね。大きな揺れの後も余震あったし。
群発地震なのかなぁ・・・?
あのあと、また揺れないかと心配であまり眠れませんでしたね・・・
2008/05/08(木) 19:53:10 | URL | Near 牛久 #- [Edit
YYさん
「蟹工船」は格差社会やワーキングプアー問題にかこつけた、新潮社の仕掛けだと思います。初版のカバーを文庫のカバーにして、ジャケ買いを狙っているようです。

私は「蟹工船」はワーキングプアー問題と言うよりはグロテスク・リアリズムとして、同じ本に入っている「党生活者」はハードボイルド小説として読んでいます。ワーキングプアー問題をプロレタリア文学に見出すなら「太陽のない街」の方がいいと思うんですが、こちらはいま手軽に入手できる文庫がありません。

環ちゃんさん
CDボックスの件、もうちょっと早く紹介しておけばなぁ、と思っています。こんなに早く品切れとは。再入荷してくれるといいのですが。中途半端な年齢の私が日中に公園のベンチでぼんやりしてますと怪訝な顔で見られる時がありますね。日本の治安は落ちたなあと思います。

near牛久さん
私も昨夜はよく寝られませんでした。余震も続いて、ずーっとふわふわ揺れたような感じでした。以前大きな地震があった時には我が本棚が崩壊したのでビビリましたが、今回は突っ張り棚が一つ落ちたくらいで済みました。
2008/05/08(木) 22:39:11 | URL | キンキン@ダイコク堂 #lUPQEYyE [Edit
太宰もカバーをデスノートの作画の人に代えたとたん売れたそうですからね。まあ太宰は今の若い人にはあうかもしれないですよ。空気読みすぎて道化をやってへとへとになる話ばっかりですからね。

こちらで文学史をやるときには(他の先生が使っているので)日本の高校の副読本を使うのですが20数年前に私が使っていたときのと比べるとプロレタリア文学の記述だけごっそり削られている(多喜二とナップくらいしか書いてない 昔のは勝本清一郎の名まであったのに)。なので昔の副読本を見せて比較して補足しています。

たしかに私やキンキンさんの年代の人が昼間うろついていると怪しまれるでしょうな(高齢NEETかと思われるのか)。こっちは仕事休みだから本を買いに行くだけなのに。もっとも職質されても私が持っているのはこっちの登録証と職員証だから余計怪しまれたりしてww。
2008/05/09(金) 19:26:23 | URL | YY #JfX/Bf2o [Edit
読んでる奴は読んでる。
大体携帯小説流行ってませんw
メディアに(ry
今の若い子は昔より国語力高いです。
2008/05/21(水) 15:55:55 | URL | 大学生S #- [Edit
大学生Sさん、コメントどうもです。

携帯小説が実際にはあまり流行ってないというのは私もそう思います。「メディアに(ry」というのは意味がよくわかりませんが、メディアが「携帯小説ブーム」をねつ造していると言うことでしょうか。多分そうなんだろうと思います。既存メディアなり作者なりのひとつの方法論として、ああいう物語の元素みたいなものを並べ立てるという手法を編み出したんだろうと思います。そもそも、テレビだ映画だと巨大なマーケットを形成しておきながら著作権者不詳なんてありえない。

たしかに「読んでる奴は読んでる」んでしょう。私が思うのは全体的な平均値のことです。いろんな大学を見てきて、偏差値上位の学校だとさほど国語力は下がっていないが、偏差値中位以下の学校だとだいぶ下がったなと言うのが実感です。もう一点、「古典」の知識はだいぶ減ったなと思います。いわゆる古文・漢文。これは入試で問われないから仕方ない部分もあります。近代文学や外国の文学でも、「名作」といわれるものを読んでいる比率は下がってますね。もっとも、そういう「名作」は「読んだ読んだ」とひけらかす輩が減っただけなのかもしれませんが。でも、ひけらかしでも共通の話題として本なり文学なりが語られることって結構大切だと思います。

ちなみに私、この文章で頭ごなしに「今の大学生は…」と難癖付けるつもりはありませんので、ご了解を。それは年長者が必ず勝つ議論ですからね。後出しジャンケンみたいなもので、あんまり意味がない。眼目は後半部分(構造改革的思考云々)に置いたつもりです。現状を自分なりにとらえて、「じゃあそこからどうすべきか」という態度を持ち続けたいと思ってます。
2008/05/21(水) 18:06:18 | URL | キンキン@ダイコク堂 #lUPQEYyE [Edit
心の栄養
お説ごもっとも!です。
生産効率ばかり優先して些細なムダを省いたところで、本当の意味でパフォーマンスは上がるのか?いや、人が健全に生きてゆくための創造力、クリエイティビティーが低下して結局は社会全体の力が落ちてゆくように思います。
本もそうですが芸術こそ、こころのご馳走です。

UNIT展ご高覧ありがとうございました。
お会いできず残念!でした。
2008/05/24(土) 07:09:51 | URL | Fujitaです #- [Edit
こちらこそ、パーティの日に伺えればよかったのですが。
当日はオーライさんの個展も伺い、オーライさんとも話をしてきました。
2008/05/27(火) 22:10:28 | URL | キンキン@ダイコク堂 #lUPQEYyE [Edit
杉山さんの話、彼からも聞きました。オーライ君とは会期中なんと5回もいっしょに飲みました。信頼できるいい友達で、かつまた非常にユニークな画家だと思っています。
ワタシは今回、初めて彼の油絵をひとつ買いましたよ♪
2008/05/28(水) 07:16:54 | URL | Fujitaです #- [Edit
へえ、どれ買ったのかしらん。私は旧作では入口はいってすぐの、ちょっとアバンギャルド風の旧作と、グループ展の青いのがいいなと思いました。
2008/05/29(木) 00:11:40 | URL | キンキン@ダイコク堂 #lUPQEYyE [Edit

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