投稿日:2006-06-18 Sun
5月23日なので少々前のことになりますが、サントリーホールに行ってきました。ウラディミール・フェドセーエフ指揮モスクワ放送交響楽団。
プログラムは以下の通り。
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲(vn:樫本大進)
ショスタコーヴィチ:交響曲第10番
前半のチャイコフスキーはまあまあ、といったところ。
どうも樫本大進のヴァイオリンは私にはあまり響いてこない。みずみずしいきれいな音をしているのですが、それがどうも「みずっぽい」ように思います。
私のお楽しみは後半戦。
クラシックに詳しくない方の中には「ショスタコーヴィチ?だれそれ」とおっしゃる方もいるかも知れません。かつて、シュワちゃんのドリンク剤のCMで「ちちんぷいぷい」と言っていた曲の作曲家だといえばいいかな。あれは交響曲第7番の第1楽章です。
もっとも、最近やっていたイエローハットのラジオCMでも、「ショスタコーヴィチ?だれそれ」と言われてましたけどね。ドミトリー先生、かわいそ。
で、非常によい演奏で、おもしろかったので、昨日発行になったつくばコンサートの会報「ホワイエ」にこれをネタにした原稿を書きました。以下転載。
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ドミトリー・コード
いま話題の「ダ・ヴィンチ・コード」。レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画に埋め込まれた暗号を解読するミステリーです。本屋さんに行くと、原作だけではなく様々な関連本が並んでいて、関心の深さを知ることができます。
音楽の世界にも、楽譜の中に埋め込まれた暗号を解読する楽しみがあります。バッハの遺作「フーガの技法」が自分の名前のスペルであるBACHの音をモチーフにしていることは有名ですが、大作「マタイ受難曲」にも、十字架音型と呼ばれるフレーズをはじめ、多くのフレーズが埋め込まれていて、音楽の意味を複雑かつ豊かにしています。モーツァルトにも、バッハやハイドンのスペルを音符にした曲があったりして、昔から関心をもたれてきました。
こうした暗号化をさらに高度なものとし、自らの主要な表現手段としたのが、今年生誕100年を迎えた旧ソビエトの作曲家ドミトリー・ショスタコーヴィチです。当時の政権の意に添う音楽作りを強要されたショスタコーヴィチは、容易に人に気づかれないような暗号を音符として楽譜に埋め込むことによって、ひそかに体制に対して舌を出すという危険な楽しみに手を染めていました。
その暗号解読はまだまだ発展途上中ですが、とくに有名な例に第10交響曲があります。ショスタコーヴィチは体制の意に添うような曲のストーリー性を公的に発表しつつも、そこに自分の名前のスペルから採った略号DSCHを音符として曲に織り込むことによって、体制の権威を茶化す筋立てともとれるように工夫をしたと言われています。さらには、この音型と絡み合うように別の音型(EAEDA)が頻出します。作曲家の吉松隆さんはこの音型を当時ショスタコーヴィチが親しくしていた女性の名前ではないかと推測していますが、氏のご論文を読むと、体制に恭順するそぶりをしつつ、きわめて個人的・内面的なテーマを描いた作品としてこの曲を聴くことができます。音楽や絵画は豊かなストーリー性を持っていますが言葉そのものではありませんから、表向きにはどうとでも言いつくろうことができる、そんな特徴を逆手にとった、命を懸けた遊びであったということができるでしょう。
ところで今回の「音楽雑記帳」の筆者のペンネーム。これも暗号のつもりです。いや、ダジャレかな…。(レファソラシ)
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最後のダジャレは池辺晋一郎先生に進呈したいと思うほどの傑作だと私は思っているのですが、編集方針に合わないと言うことで削除。そのかわり別種の暗号を忍び込ませてあり、それは無事通過しましたw
吉松隆氏の論文は以下のアドレスで読むことができます。
http://homepage3.nifty.com/t-yoshimatsu/~data/BOOKS/Thesis/shostako10.html
つくばコンサート「ホワイエ」pdf版は近々HP上にアップされますので、そのときご紹介します。
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